【検証001】「月10万円の積立で、5〜7年で5,000〜7,000万円」は成立するか
「AIを使った資産形成」を扱うある記事に、こう書かれていました。
一般的な資産形成で「月30万円の運用益」を作るには、5,000〜7,000万円の元本と平均年利5%の運用が必要と言われています。でも(この手法)なら、月10万円の入金余力を作るだけで、5〜7年で同じゴールに届く水準まで持っていけます。
引っかかったので、電卓を叩きました。
検算
月10万円を積み立て、年利5%で運用した場合の到達額です(月次複利、税・手数料は考慮せず、運用側に最も有利な条件で計算しています)。
| 期間 | 到達額 | うち元本 | 運用益 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 680万円 | 600万円 | 80万円 |
| 7年 | 1,003万円 | 840万円 | 163万円 |
| 10年 | 1,553万円 | 1,200万円 | 353万円 |
| 20年 | 4,110万円 | 2,400万円 | 1,710万円 |
| 30年 | 8,323万円 | 3,600万円 | 4,723万円 |
7年で1,003万円。
記事が掲げた5,000〜7,000万円に対して、およそ5分の1から7分の1です。
逆算してみる
では、7年で5,000万円に届かせるには、毎月いくら必要なのか。
| 目標 | 必要な毎月の入金額 |
|---|---|
| 7年で5,000万円 | 月49.8万円 |
| 7年で7,000万円 | 月69.8万円 |
| 5年で5,000万円 | 月73.5万円 |
月10万円で5,000万円台に到達するのは、30年前後かかる計算になります。
記事は、正しい数字を自分で書いていた
ここが一番奇妙な点です。
同じ段落の前半で、記事はこう書いています。
月30万円の運用益を作るには、5,000〜7,000万円の元本と平均年利5%の運用が必要
これは概ね正しい。7,000万円 × 5% = 年350万円 = 月29.2万円ですから、計算は合っています。
そして後半で、その1/5〜1/7の入金額で同じゴールに届く、と述べる。
前提の置き方の違いではありません。同一段落の中で、自分が書いた数字と矛盾しています。
判定:🟥 破綻
誤差ではなく、桁の問題です。この主張を根拠に行動を決めることはできません。
公平のために ── 記事が正しかった部分
- 「5,000〜7,000万円の元本と年利5%で月30万円の運用益」という前提の置き方は妥当です。
- 積立と複利という方向性そのものは正しいです。上の表の通り、月10万円を30年続ければ8,323万円になります(元本3,600万円)。複利が効くのは事実で、効くまでに時間がかかるというだけです。
- 記事が挙げていた「固定費の見直しで入金余力を作る」という手順自体は、実務的に妥当なアプローチです。
つまり問題は手法ではなく、到達までの時間軸が5〜7倍圧縮して書かれていたことにあります。
そして、この圧縮こそが、記事を読み進めさせる推進力になっていました。
検算に使ったコード
こちらで確認できるようにしておきます。
r = 0.05 / 12 # 年利5%・月次
for years in [5, 7, 10, 20, 30]:
n = years * 12
fv = 100000 * (((1 + r)**n - 1) / r)
print(f"{years:2d}年 -> {fv/10000:,.0f}万円 (元本 {100000*n/10000:,.0f}万円)")
前提を変えたい方は、r と積立額を書き換えてください。年利7%で計算しても、7年で1,092万円です。桁は変わりません。
再現条件
この主張が成立する条件を探すと、こうなります。
- 毎月50万円前後を7年間入金し続けられる場合 → 成立します
- 月10万円で5,000万円台を目指す場合 → 約30年必要です
- 年利を非現実的な水準(20%超)に置く場合 → 成立しますが、その前提自体が別の検証対象になります
本記事は特定の個人・アカウントを対象とするものではなく、記事内で提示された計算の妥当性のみを検証しています。