検算ノート 実際のところ、どうなんだろう。

【検証004】別々の人の体験談が、同じ雛形から出てきていた

2026-08-12⬛ 検証不能検証カルテ "004"

別々のアカウントが出していた「体験談」を2本、並べて読みました。

テーマはまったく違います。片方はコンテンツを作って売る話で、もう片方はお金まわりの話。書き手も別人です。

なのに読み進めるうちに既視感がどんどん強くなってきて、途中でやめて、2本を左右に並べて突き合わせることにしました。

結論から書きます。同じ雛形の出力でした。

何を検証したか

検証したのは手法ではありません。

この2本が、それぞれ独立した体験の記録として読めるかどうか。そこだけを見ています。

体験談が根拠として働くのは、書いた人が実際にやって、実際に起きたことを書いているからです。同じ雛形にトピックだけ差し替えて出力されたものなら、そこに書かれた「月◯万円」は誰の実績でもない。

だから、まず雛形かどうかを確かめる必要がありました。

突き合わせた結果

固有名詞は伏せます。手法名・サービス名・AI名はすべて ◯◯ に置き換えました。それ以外は原文のままです。

記事A 記事B
そう思ってた僕が、去年から始めた「◯◯ × ◯◯」で、7月時点で【月27万円】を…(個人差はありますが) そう思ってた僕が、去年から始めた「◯◯ × ◯◯」で、7月時点で【月32万円】を…(個人差はありますが)
「そんな都合のいい話ある?」と思うかもしれません。僕自身、半年前まで同じことを思ってました。 「そんな都合のいい話ある?」と思うかもしれません。僕自身、半年前まで同じことを思ってました。
でも実際にやってみたら、…「これ、構造がまるで違うな」というのが正直な感想です。 でも実際にやってみたら、…「これ、構造がまるで違うな」というのが正直な感想です。
「時間はもう増やせないんだよな」その壁にぶつかっていたとき、 「時間はもう増やせないんだよな」その壁にぶつかっていたとき、
半年前まで僕は、いろいろ手を出して月4万から7万をウロウロしていました 半年前まで僕は、いろいろやって月4万から7万しか◯◯に入金できませんでした
1度書いたものが、半年後にもう1度売れる。放置が効くのはこの構造のおかげです。 1度書いた記事が、半年後にもう1度読まれる。放置が効くのはこの構造のおかげです。

見出しの並びも一致します。「◯◯が強すぎる理由」→「そもそも◯◯は、△△な人ほど向いている」→「半年前の僕は、完全に頭打ちでした」→「4STEP全公開」→「実際の月次推移」→「何度か失敗もしました」→「ここまで読んでくれた方へ」→「最後に」。

順番まで同じでした。

ちなみに2行目、疑問符が片方は全角で片方は半角になっています。どこかで一度コピーを経由した跡かなと思っています。

一致率を計算する

「似てますよね」で終わらせると、それはただの印象です。数字にしました。

文字単位で一致率を出しています。16箇所を照合して、そのうち代表的な8組がこちら。

一致率
1 98.1%
2 97.8%
3 100.0%
4 100.0%
5 66.7%
6 91.1%
7 96.2%
8 100.0%

平均93.7%。8組のうち3組は、1文字も違いませんでした。

組の番号は、この下に置いたコードの並び順に対応します。上の突き合わせ表に載せたのは、そのうち1〜6組です。

一致率が最も低い5組目(66.7%)も、中身を見れば「半年前まで僕は」で始まって「月4万から7万」で止まる骨格は共通していて、後半の言い回しが差し替わっているだけです。

使ったコードも置いておきます。

from difflib import SequenceMatcher

pairs = [
    ("そう思ってた僕が、去年から始めた「◯◯ × ◯◯」で、7月時点で【月27万円】を…(個人差はありますが)",
     "そう思ってた僕が、去年から始めた「◯◯ × ◯◯」で、7月時点で【月32万円】を…(個人差はありますが)"),
    ("「そんな都合のいい話ある?」と思うかもしれません。僕自身、半年前まで同じことを思ってました。",
     "「そんな都合のいい話ある?」と思うかもしれません。僕自身、半年前まで同じことを思ってました。"),
    ("でも実際にやってみたら、…「これ、構造がまるで違うな」というのが正直な感想です。",
     "でも実際にやってみたら、…「これ、構造がまるで違うな」というのが正直な感想です。"),
    ("「時間はもう増やせないんだよな」その壁にぶつかっていたとき、",
     "「時間はもう増やせないんだよな」その壁にぶつかっていたとき、"),
    ("半年前まで僕は、いろいろ手を出して月4万から7万をウロウロしていました",
     "半年前まで僕は、いろいろやって月4万から7万しか◯◯に入金できませんでした"),
    ("1度書いたものが、半年後にもう1度売れる。放置が効くのはこの構造のおかげです。",
     "1度書いた記事が、半年後にもう1度読まれる。放置が効くのはこの構造のおかげです。"),
    ("これに気づいて動いてる人は、まだそんなに多くないです。僕は、こっち側に来ました。よかったら、隣に来ませんか?",
     "これに気づいて動いてる人は、まだそんなに多くないです。僕はこっち側に来ました。よかったら隣に来ませんか?"),
    ("正直、有料で売っても遜色のない内容だと思っています。でも、LINE登録してくれた方には無料でお渡しします。",
     "正直、有料で売っても遜色のない内容だと思っています。でも、LINE登録してくれた方には無料でお渡しします。"),
]

total = 0.0
for i, (a, b) in enumerate(pairs, 1):
    r = SequenceMatcher(None, a, b).ratio()
    total += r
    print(f"{i}: {r*100:5.1f}%")
print(f"平均: {total/len(pairs)*100:.1f}%")
print(f"完全一致: {sum(1 for a, b in pairs if a == b)}/{len(pairs)}")

決定的だったのは、AIの比較表

ここからが本題です。

2本とも、「実際に3社の主要AIで比較した結果です」と書いたうえで、比較表を載せています。実験をした、という体裁になっている箇所。

AI名も伏せて、AI-1/AI-2/AI-3と置きます。左右で同じ番号は同じAIを指します。

記事Aの結論 記事Bの結論
AI-1 構成は速いけど、教科書みたいな文章になりやすい 数値計算・パターン網羅・シミュレーションが異次元
AI-2 リサーチは強いけど、文章の温度が上がらない リサーチは強いけど、シミュレーションの深さが浅い
AI-3 つまずいた実感が書ける。読み物として成立する 文章の温度は最強だけど、数値計算とパターン網羅がやや弱い

同じ3社を比べて、AI-1の評価が正反対になっています。

記事Aでは「教科書みたい」と切られ、記事Bでは「異次元」と持ち上げられる。そしてAI-3は、その逆をやられている。

つまり、それぞれの記事が推したいAIが1位に来るように、評価だけが入れ替わっているわけです。

見てほしいのはAI-2の行です。

記事A:リサーチは強いけど、文章の温度が上がらない
記事B:リサーチは強いけど、シミュレーションの深さが浅い

「リサーチは強いけど、〜」まで同一で、そのあとだけ差し替わっている。両方で噛ませ犬の位置に置かれていて、負かされ方の文型まで共通です。

これは実験の結果ではありません。推したいAIに合わせて中身を入れ替えられる、穴埋め欄です。

3社を比較したのではなく、比較したという体裁の枠に、結論を後から流し込んでいる。

判定:⬛ 検証不能

破綻ではありません。

破綻は「計算が合わない」「記事の中で矛盾している」ときに付けるラベルで、今回はそれ以前の話です。

検証しようにも、検証の対象になるデータが存在しない。

書かれている月27万円も月32万円も、誰かが実際に稼いだ金額なのか、雛形に元から入っていた数字なのかが判別できません。判別できない数字は、検算しても意味がない。同じ理由で、月次推移の表も、失敗談3つも、根拠としては数えられません。

いつもなら「その月◯万円は売上なのか、手数料と税を引いた手取りなのか」を聞くところなんですが、今回はその手前で止まります。どちらの数字も両方の記事に書かれていなくて、しかも誰の数字か分からない。定義を問う相手がいません。

だからこの2本は、手法の有効性を示す証拠として使えない、という判定になります。

ここは強調しておきたいところで、手法が無効だと言っているわけではありません。

証拠にならない、と言っているだけです。この2つはまったく別の話で、混ぜると今度はこちらが雑な断定をすることになる。

この2本から持ち帰っていいもの(再現条件)

とはいえ全部が使えないわけでもないので、線を引いておきます。

3つ目だけは、雛形かどうかと関係なく成立するかしないかが決まります。誰が言ったかではなく、やってみれば分かる種類の話なので。

なので、こちらで実際にやります。第2階層の検証で扱う予定です。

ちゃんと合っている部分の話

雛形だと分かったあとでも、この文章がうまいことは認めざるをえません。

「時間はもう増やせないんだよな」という一文。ここ、読ませる力があります。副業を考える人が最初にぶつかる壁を、正確に一行で言い当てている。

失敗談を3つ挟む構成も、信頼を作る装置としてよくできています。順番まで型として決まっているのが分かってしまうと、それはそれで感心してしまうんですが(笑)。

あと、「個人差はあります」を必ず入れている点。誠実さの演出として機能しているのはその通りだけど、書いていること自体は正しいです。

手法の説明部分にも、たぶん正しいものが混ざっています。 地味なテーマは競合が薄い、決済が同じ画面で完結すると離脱が減る。このあたりは構造から考えて筋が通っている。

雛形から出てきた文章だという事実は、そこに書かれた主張を自動的に間違いにはしません。

確かめる方法が、実際にやってみること以外にないというだけです。

今回かかったもの

時給換算はまだ出しません。売上が0なので計算すれば0円ですが、それは数字として何も語っていないので。しばらくは、続けられているかどうかだけ見ます。

次にやること

同じ雛形が、ほかに何アカウントで使われているか。

特徴的な一文で検索すれば、これも0円で調べられます。2本で雛形なら、3本目以降が出てくる見込みは高いと思っています。

見つかった数がそのまま、この手の「体験談」の読み方になるはずです。


本記事は特定の個人・アカウントを対象とするものではなく、記事に書かれた文章と数字だけを検証しています。引用は照合に必要な範囲にとどめ、手法名・サービス名・AI名は伏せました。